夏タイヤ 2024年シーズンのアップデートが完了!

エコタイヤ性能比較(低燃費タイヤ) 転がり抵抗係数とウェットグリップ性能

 エコタイヤ性能比較としながらも掲載するのは低燃費タイヤに限定。各製品の転がり抵抗係数とウェットグリップ性能のグレーディングに注目します。

 また、タイヤの騒音規定についても2023年1月から自主的な取り組みとして開始されています。UN R117-02が定める車外騒音基準値を満たす製品を「低車外音タイヤ」として表示制度を定めています。当サイトでは今後順次その旨を示すことに致します。

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エコ~低燃費タイヤへ

 エコタイヤの発想はミシュランの「グリーンタイヤ」が発端では、とも言われています。シリカをコンパウンドに配合することで、転がり抵抗低減への効果を実証しました。

 転がり抵抗を低減しようとすると、グリップや摩耗性能が犠牲になるというのがそれまでの考え方。それを打ち破るのが グリーンXテクノロジー(グリーンタイヤ)です。この技術でミシュランはエコタイヤを実現したと言えそう。

 国内メーカーも様々な発想で迫ります。当時話題になったヨコハマとダンロップの製品はトータル的なエコの発想を確立。低燃費に優れ燃料費を抑える、それは結果として走行時のCO2排出量を削減し環境に優しいに繋がります。エコ=低燃費、だけではない。エコタイヤ発展期におけるメーカー主張はここを声高に訴えました。

 素材改革等による超エコタイヤの出現は他メーカーも追随。これにより市場に溢れるエコタイヤは、エコ性能の主張がメーカーによってバラバラ、性能の後ろ盾も弱いなどユーザーには戸惑いが見られるようになりました。極端な話、エコです! とアナウンスすればエコタイヤとして括られてしまう‥

 自社製品の優秀性を打ち出すのは当然ながら、結果として市場での混乱を拡大させる懸念が生じていたのです。一方で冷静なユーザー判断もありました。各メーカーが主張性を高めれば高めるほど、その根拠に対する比較要件を求めるようになっていたのです。

 ここから新たな局面を迎えることに。2010年に『低燃費タイヤ』が出現、「転がり抵抗」と「ウェットグリップ」の規定をグレーディングで表示し、客観的な性能を示すことになりました。

 この一連の経過は、タイヤ → エコタイヤ → 超エコタイヤ → 低燃費タイヤ へ。エコタイヤの発展系が低燃費タイヤ。結論付けると、大きな意味で低燃費や環境面での優位性を謳うのがエコタイヤ、公平性により一定条件をクリアしたのが低燃費タイヤです。

低燃費タイヤの定義を具体的に!

 データ計測の統一的な見解や情報提供等について、国交省及び経産省が主導。低燃費タイヤ等普及促進協議会を設置、2009年7月に方向性がとりまとめられました。最終的には業界自主基準として、決定されたのが「低燃費タイヤ」です。翌2010年1月から適用開始。

 詳細に関しては、一般社団法人 日本自動車タイヤ協会(JATMA)より、ガイドライン(ラベリング制度とは)が発表されています。

 低燃費タイヤの定義、範囲はユーザーが交換用として販売店等で購入する、乗用車用夏用タイヤに適用されます。(新車装着、スタッドレス、M+S表示などは対象外)

 性能別にグレーディングシステム(等級制度)を設け、転がり抵抗係数 を5等級(「AAA」「AA」「A」「B」「C」)に、ウェットグリップ性能 を4等級(「a」「b」「c」「d」)にレベル分けします。

 その中で、転がり抵抗係数が「A」以上(「AAA」「AA」「A」)、ウェットグリップ性能が「a」「b」「c」「d」の範囲内、更に安全性の面から十分な性能を確保された製品が適合します。

 またユーザーに対して適切な情報提供をするラベリング(表示方法)の制度を構築。グレーディングシステムをカタログやホームページ等で表示、要件を満たした場合、低燃費タイヤ統一マークを併せて表示します。

 国内における実施メーカーは次の通り。㈱ブリヂストン、住友ゴム工業㈱、横浜ゴム㈱、TOYO TIRE㈱、日本ミシュランタイヤ㈱、日本グッドイヤー㈱、㈱ハンコックタイヤジャパン、クムホジャパン㈱、ナンカンタイヤ㈱、㈱オートバックスセブン、ピレリジャパン㈱、ネクセンタイヤ コーポレーション、㈱マキシスインターナショナルジャパン、ノキアンタイヤ。

欧州ラベリング制度(参考)

 2010年1月から先行する国内の低燃費タイヤ規定、そうラベリング制度の基になったのは先行議論が進んでいた欧州規定でした。しかしながらより厳密に施行する欧州では法規制化の為に導入は2012年11月からで、国内より2年遅れとなりました。

 欧州規定は、転がり抵抗係数が「A、B、C、E、F、G(「D」は使わない)」の6等級、「A」が最も優れ「G」が最も劣ります。15.3km/Lのクルマでは1等級上がるごとに0.18~0.24km/L(1% ~ 1.5%)燃費が向上するという。

 ウェットグリップ性能は「A、B、C、E、F(「D」と「G」は使わない)」の5等級で表示します。「A」と「F」を比較すると制動距離差は最大18mにもなるよう。

 また騒音は3段階の評価と音の大きさを表すdB(デシベル)で表示。バーが増えるほどノイズは大きくなります。いずれも基準に入らないタイヤは販売できません。

 注意点として欧州と国内では等級表示が同じ「A」でも指針が異なります。従って直接比較にはなりません。また欧州規定は法制化されているのに対し、国内規定は飽くまでも業界自主基準です。

 更に触れておくと実はタイヤに起因する騒音規制、国内でも2018年4月からスタート。現時点では新車装着用が対象、ただ内容は欧州規制に準じるもので「72」~ 「79」dbに収めるのが基準です。

 参考として国内規定と照らし低燃費タイヤ要件を比較してみました。前者国内 = 後者欧州。

■転がり抵抗係数
 AAA = A
 AA = B
 A = C

■ウェットグリップ性能
 a = A
 b = B
 c = C
 d = E

低車外音タイヤのラベリング制度

 市販用タイヤについて日本でのタイヤ騒音規制導入が具体化していないことから、自動車タイヤ業界の自主的な取り組みとして、UN R117-02が定める車外騒音基準値を満たすタイヤを「低車外音タイヤ」として、その表示制度を定めることで低車外音タイヤの普及促進を図ることになりました。

 この制度の対象は、乗用車用、小形トラック用、トラック・バス用それぞれの夏冬用の市販用タイヤとしています。タイヤラベル、タイヤカタログ、各社ウェブサイト等の販促物での「低車外音タイヤ」の呼称やそれを表すアイコンの表示方法を定めるもの。運用は2023年1月からです。

 「低車外音タイヤ」の呼称やそれを表すアイコンが表示されているタイヤは、基準を満たしたタイヤであることを示します。

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エコタイヤ性能比較(低燃費タイヤ)

ブリヂストン

 ブリヂストンの施策は業界に大きな影響を与えて来ました。そのあり方は2つの方向付けを構築。1つは従来から更なるグレーディング追求を図ること。もう1つはそこを標準レベルに留めながらも本来のカテゴリー(ブランド)追求を重視すること。

 前者はラベリング制度による、転がり抵抗係数「AAA」、ウェットグリップ性能「a」という現在の最高グレーディングを実現する製品に技術披露の役割を持たせています。これ他メーカーも追随する動き。

 対して後者、代表されるのは「REGNO」のあり方でしょう。プレミアムブランドながらグレーディング追求はそこそこに、優先するのは極上の静粛性。ミニバン用「GRVⅡ」も同様の主張を展開します。更に軽カーへも極上を向けています。

 また「Playz」シリーズの新たな構築は「ECOPIA」への拘りを一掃。取り敢えず「ECOPIA」を冠するそれまでの動きに決別、本来のブランド追求を実行します。

ヨコハマ

 ヨコハマは国内メーカーの中でいち早くエコタイヤに着目、1998年の発売以来常に進化を遂げその中心が「DNA」でした。そして低燃費タイヤのグローバルコンセプト「BluEarth」ブランドへスイッチ、その後の集中投入は見事です。

 「BluEarth」は、コンフォート、ミニバン、スタンダードの各カテゴリーで展開されます。「AAA/a」となる最高グレーディングを達成した「BluEarth-1 EF20」は、フラッグシップに位置付けられます。また過去の人気商品「DNA Earth-1」の後継には「BluEarth-A」が出現、更に「BluEarth-GT AE51」へ進化し圧倒的なフォローを誇ります。

 ヨコハマにとって第3世代を印象付けるのは、スタンダードカテゴリー内で「AAA/c」を搭載する「BluEarth AE-01F」と、「A/b」を搭載する「BluEarth-Es ES32」を同時展開していること。また新たなミニバン用「BluEarth-RV RV03」は「AA/a」によるプレミアムミニバンを謳います。更にスポーツ低燃費タイヤを謳う「ADVAN FLEVA V701」にも注目しないと。

ダンロップ

 ダンロップのエコブランドは、「VEURO」、「LE MANS」、「エナセーブ」です。そして低燃費タイヤへの移行は「エナセーブ」が一層の強化を果たします。コンフォート、ミニバン、スタンダードの各カテゴリーで充実展開を実現。

 遅れていた最高グレーディング「AAA/a」は、「エナセーブ NEXT」で達成し「エナセーブ NEXTⅡ」へ。そして「エナセーブ NEXTⅢ」に到達しています。ブリヂストン、ヨコハマ、トーヨーと同列になりました。

 ただ普及への役割を担うのは、2017年登場の「LE MANS V」です。乗り心地と静粛性を大幅に高め、耐偏摩耗性能も向上させたのが主張点です。最新は「LE MANS V+」へ。全サイズで「AA/b」を実現、低車外音タイヤという新たな訴えも。更なるボリュームを託すのがスタンダード「エナセーブ EC204」です。

トーヨー

 トーヨーの「NANOENERGY」シリーズ投入は、日本国内はもとより欧州など世界市場も強く意識。「NANOENERGY 1」、「NANOENERGY 2」、「NANOENERGY 3」と投入し、「NANOENERGY 0」ではとうとう最高グレーディング「AAA/a」を達成しました。

 ただ2016年に「NANOENERGY 3 PLUS」が登場。ラベリング制度の転がり抵抗係数「A」を維持しながらも、ウェットグリップ性能を従来の「c」から「b」にグレードアップ。それに伴い「NANOENERGY 1」、「NANOENERGY 2」はフェードアウトに。

 進化が遅れていたプレミアムコンフォートは「PROXES C1S SPEC-a 」でようやく低燃費タイヤ化を実現。しかし2019年は再度従来品のエコタイヤ「PROXES C1S」へ一本化。しかし最新は「PROXES Comfort Ⅱs」へ。「AA/b」「A/b」のいずれかを実現します。

 「TRANPATH」シリーズは、コンフォートミニバンユーザーをターゲットに「A/a」を搭載する「TRANPATH mp7」が投入されました。そしてプレミアムスポーツとして「PROXES Sport」が配置されています。その進化系「PROXES Sport 2」は全サイズでウェットグリップ性能「a」を実現。ただ転がり抵抗係数「A」をも満たすのは14に留まり‥

ファルケン

 ファルケンはダンロップ同様住友ゴムが展開します。その状況下で注目を集めるのがコンフォート「ZIEX」です。「ZIEX ZE914」で低燃費タイヤを実現し、ラベリング制度は「A/c」とやや微妙ながら、従来品の踏襲を基本性能として進化しました。

 そしてここから僅か1年半で更なる進化を遂げたのが「ZIEX ZE914F」。低燃費性能を維持しながらウェットブレーキ性能を9%向上。その結果、ラベリング制度のウェットブレーキ性能は「c」から「a」もしくは「b」へいずれもアップの展開です。

 またスタンダード「SINCERA SN832i」は転がり抵抗係数「A」、ウェットグリップ性能「b」もしくは「c」のグレーディングです。スタンダードカテゴリーの現状からすると至って標準的。しかしながら双方フェードアウト‥ これ非常に残念。

 プレミアムスポーツで一部サイズながらようやく実現したのが「AZENIS FK520L」です。

製品名転がり抵抗ウェット
スポーツ
AZENIS FK520LA(一部)a(一部)
コンフォート
ZIEX ZE914FAb
スタンダード
SINCERA SN832iAb(c)

グッドイヤー

 グッドイヤーが誇るハイブリッドテクノロジーは第4世代G4に進化しています。G4とは、転がり抵抗低減とウェットグリップのバランス性能を高度に実現する先進技術の総称です。これを搭載したのが、2015年シーズンから始まった「EfficientGrip(E-Grip:いいグリップ)」シリーズ。

 最新プレミアムにポジショニングされる「E-Grip Performance 2」は、欧州グッドイヤーで開発され国内導入を実現。グッドイヤーのプレミアムカテゴリーは「EAGLE LS PREMIUM」が存在するものの、低燃費タイヤの規定を満たしていないのが痛い。期待は必然的に高まるはず。同様に欧州グッドイヤーで開発されたSUV「EfficientGrip 2 SUV」にも注目。サイズ数は限定されるも「AA/a」を実現している。

 コンフォート「E-Grip Comfort」が新たな期待を背負って登場。スタンダードは「E-Grip ECO EG02」へ移行。スタンダードのラインアップにも高性能化の主張が響きます。同様にSUVへも「E-Grip Performance SUV」が投入、2019年一部サイズながら低燃費タイヤ化を果たします。

 そんな中、プレミアムスポーツとして登場した「EAGLE F1 ASYMMETRIC 6」、ウェットグリップ性能は全サイズで最高グレーディング「a」を、転がり抵抗係数は一部を除き「A」を達成。「EAGLE F1 SUPERSPORT」も一部ながらスポーツ低燃費タイヤに位置付けられます。

ミシュラン

 ミシュランのグリーンタイヤ構想が発端と言われるエコタイヤ、1992年に初めて実用化されてから20数年が経過しました。現在は転がり抵抗低減に対する進化レベルは飛躍的に向上し、相反する性能との共存も高位に実現しています。

 「PILOT SPORT」シリーズは「PILOT SPORT 5」が新たに投入、スポーツカテゴリーの低燃費化に努めます。「ENERGY」シリーズはグリーンタイヤコンセプトとして、環境保護に厳しいヨーロッパの基準をクリアーしたエコ製品です。国内で展開するのは「ENERGY SAVER+」、そして最新は「ENERGY SAVER 4」が投入されました。

 また「PRIMACY」シリーズは次世代コンフォートとして国内へ導入。コンフォートとしての極上性(プレミアムコンフォート)も備え2018年には「PRIMACY 4」へ。更に静粛性と省燃費性を確保した上で、履き始めから履き替え時までウェットブレーキ性能の更なる向上を謳う「PRIMACY 4+」が登場。ミシュラン史上最高の低燃費性能を誇る「e・PRIMACY」も投入済み。

 2014年にSUV専用として初の低燃費タイヤを実現したのが「LATITUDE Sport3」、そして2022年には「PRIMACY SUV+」がプレミアムSUVコンフォートとして新たに発売されました。。

ピレリ

 国内におけるピレリのエコ戦略、これまで目立った動きではありませんでした。しかし、2008年に「Cinturato」シリーズが導入され、欧州のみならず日本国内においてもやっとその取り組みが見えて来たのです。

 「Cinturato」シリーズは、エネルギー消費を抑えたコンパウンドの採用、構造やプロファイル(断面)形状を見直すことで転がり抵抗を低減するなど、ピレリ独特の拘りが感じられます。

 2014年4月から導入が開始された「Cinturato P7 BLUE」は国内低燃費タイヤ規定を満たした製品。転がり抵抗係数「AA」(一部「A」)、ウェットグリップ性能「a」を実現します。そして2017年には新たな「Cinturato P6」が投入されました。独自路線いっぱいのピレリながら、国内事情に沿う姿を徐々に強化しています。

 更に2020年は「Cinturato P7」の進化モデル「Cinturato P7(P7C2)」が低燃費タイヤとして投入されました。

 ただ絶対数で国内メーカーに比較すると寂しさが感じられます。低燃費タイヤ第3世代でカテゴリー特性追求に傾倒しつつあるものの、いま少し頑張りを期待したいところです。そこで「POWERGY」には期待大きい。「AA」(一部「A」)、ウェットグリップ性能「a」により注目度は爆上がりです。

コンチネンタル

 コンチネンタルは製品進化が第6世代から第7世代へ突入。名称も conti 外しが実践され世代の違いを明確化。国内では日本法人設立以降製品導入が積極的で、グローバルに近いラインアップを果たします。

 しかし低燃費タイヤに関しては、国内規定を満たす条件のひとつである一般社団法人 日本自動車タイヤ協会(JATMA)の低燃費タイヤ等のラベリング制度に参画している企業として名を連ねておらず。その適用は適いません。従って飽くまでもメーカー主張によるエコタイヤ止まりです。欧州規定は高位のグレーディングを実現することから早急な対応が望まれます。

 というのも現状のあり方が非常にもったいない。その特性から現状のあり方には満足せず。従来止まりのエコタイヤの括りではね‥ 国内における低燃費タイヤの普及率は80%以上にも達しており、乗り遅れ感の解消を急ぐべきかと。

低燃費タイヤへの変遷

エコ~低燃費タイヤへの変遷
エコタイヤはエコロジー+エコノミーで括りたい。エコ=低燃費、だけではない。転がり抵抗低減にプラスしてトータル的な拘りがエコの本質。…
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