クルマのパーツの中で唯一路面と接するのがタイヤです。非常に大切なパーツながら、皆黒くて丸いゴムの塊だしその重要性は見逃されることが多いのです。
そこで現状を取り巻く市場動向を詳細に察知、装着する時の選び方、そう考え方に繋げます。
なぜ黒くて丸い?(ブラックサークル)
形あるものに対してデザインって大切だと思います。その点からタイヤはどうよ? 径や幅の大小は様々あるものの黒くて丸い(ブラックサークル)のは皆同じ、大きささえ合えば装着は基本可能、というのが極論。
形が丸いのは転がる為に、そして黒いのはゴムにカーボンブラックと呼ばれる強度を高める黒い炭素の粒が配合されている為です。クルマの走りを支えるには非常に大きな力に堪えられなくてはいけません。その為の適正素材です。
またゴム以外にも様々な素材で構成され、近年はシリカと呼ばれる二酸化ケイ素によって転がり抵抗低減を実現します。更には石油由来の素材を減らすなど環境面での気遣いも一般化しています。
素材面での進化が著しくても黒くて丸いのは変わらず。やはり外見から性能の良し悪しを感じることは難しい? いやいやそうとも言えず! トレッド面(接地面)やサイドのデザインは製品により実は相当異なります。デザインの差は性能へ非常に大きな影響を及ぼします。そのデザイン、見た目の差別化を得るためのものじゃなく本質は性能へ直結するものです。
最も目立つのはトレッド面に刻まれた溝でしょう。主となる役割は排水性、そして静粛性。幅や本数、方向性などは勿論、細部に渡って特徴的なデザインが施され、より向上効果を狙います。
例えば太い溝を2本刻む、一方では細い溝を4本刻む。この2つ、溝面積が同じであっても実際の走りには大きな差が生じます。これをそれぞれ車種特性に見合うよう最適化すれば、製品特徴別のカテゴリーに分散されます。
スポーツはグリップ力を高めているのが特徴です。ブロック面積を確保し剛性を強化し接地性を高めます。ただより多くの溝を刻むことが難しい為に、幅広にデザインし最小本数で効率的な排水効果を得ています。これを実現するのに方向性パターンを採用する例が多く、大胆でスパルタンな印象を与えます。
一方でパターンノイズを発生しやすい弊害もあります。接地面となるブロックが路面を叩き、溝の中の空気が圧縮され弾けるからです。抑制するのにはブロックを小さく、弾ける音を抑えるのに溝を細くする必要があります。この考えを採用するのがコンフォート、細くした溝は本数を増やすことで集水しウェットでの安定性を確保します。本数が増せばデザインは複雑化し洗練されたイメージが高まります。
最近はサイド形状にも性能へ直結する重要な役割を持たせています。空気抵抗の低減に拘り、ゴルフボールを思い起こさせるディンプルが配される製品も見られます。更にロゴデザインにも主張性を持たせ、こちらは機能よりも見た目の個性化を意識してのことかと。
近年、ナノレベルなど高度化した技術の採用は当然のように行われています。同様に見た目のデザイン、そうトレッド面やサイドにも機能化されたデザインが取り入れられています。結局はデザインと素材の両面から性能向上を果たす、黒くて丸いのは結果でありその中には多彩な性能を搭載しています。
装着は新車装着と市販に大別
クルマに装着されるのは、一般に「新車装着」と「市販」の2つが存在します。
新車装着は、クルマとタイヤ双方メーカーの共同開発が基本です。新たに開発する車種性能を最大限発揮させる為に、操縦安定性、乗り心地、静粛性、転がり抵抗等を満たした専用を主張します。
ただ車種開発の一部に含まれることで、搭載技術や性能特性についてはグレーの部分が多い。その性格が製品特性の明確化に足枷となり、メーカーからは最小レベルの情報止まりです。
また車種違いでも同一銘柄を採用するケースが多く、専用における程度に少なからず混乱がある。それでもメーカーにとっては採用実績が信頼の証となり主張には積極的です。
但し、毎度同じ内容に終始する現状から情報の満足感を得られるかは微妙。少なくとも当サイトではつまらない、と判断し特別な興味が発せられた時を除きスルーしています。
一方市販は、アフターマーケットでの汎用性を示しカテゴリーに対する性能追求を図ります。スポーツ性能を重視したタイプや快適性能を重視したタイプ、またミニバンやSUVなど専用タイプも構築し広く車種対応をフォローします。
車種専用の開発ではないけれどカテゴリー内では各々特性を主張し、ユーザーの好みに合わせた選択が可能です。また購入手段は多岐に渡りコスト的にも新車装着より安価など、新車装着からの買い替えは圧倒的に市販となるのが現状です。
興味深いのは購入メーカー。新車装着と同様を選ぶユーザーが一定数を占めるという。確か30%以上あったような・・ 従って新車装着に採用されることは、製品の信頼性にプラスして市販ボリュームにも繋がることになります。
構成比はこんな感じ
JATAMA(一般社団法人自動車タイヤ協会)の公表値から、2021年タイヤ実績(乗用車用のみ)を抜粋すると、新車用が29,226千本。対して夏市販用31,839千本+冬市販用16,150千本、合計47,989千本でした。構成比は以下のように算出しました。(年度によって微妙な差がありますので参考レベルです)
新車用(29,226千本):夏市販用(31,839千本)=47.9:52.1
新車用(29,226千本):夏冬市販合計(47,989千本)=37.9:62.1
世界市場シェア
世界的に見るとメーカーの勢力図に変革が起きています。メジャーと呼ばれるブリヂストン、ヨコハマ、住友ゴム(ダンロップ・ファルケン)、トーヨー、グッドイヤー、ミシュラン、ピレリ、コンチネンタルは当然ながら、これにアジアンメーカー等の台頭が際立ち激しいシェア争いが年々増しています。参考として2021年(2020年実績)の最新データを以下に示してみます。(出典:タイヤビジネス誌、2021世界シェアをメーカー別にランクしたもの)
1、ミシュラン 14.8%
2、ブリヂストン 12.5%
3、グッドイヤー 8.4%
4、コンチネンタル 6.8%
5、住友ゴム 4.1%
6、ピレリ 3.6%
7、ハンコック 3.4%
8、中策ゴム 2.6%
9、横浜ゴム 2.2%
10、正新 1.8%
11、トーヨー 1.7%
12、ジーティー 1.6%
13、その他 36.6%
また世界3大メーカー、ビッグ3(ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー)の合計は圧倒的なシェアを誇っています。しかし、2000年に50%以上あったものが近年は30%台と減少に転じる傾向にあります。マイナス分の多くはそうアジアンメーカー等に流れている訳です。
2021年 35.7%
2020年 36.1%
2019年 37.8%
2018年 37.1%
2017年 37.0%
2016年 37.6%
2015年 38.0%
2014年 37.3%
2013年 37.7%
2012年 39.4%
2011年 40.7%
2010年 42.1%
・
2005年 53.2%
・
2000年 56.8%
ということで、数値が示す通りメーカーの激しいシェア争いが勃発しています。逆に捉えれば、メージャーメーカーにアジアンメーカー等が加わり最大級の供給が実現しているとも言えます。
一点残念なのはブリヂストンが1位からダウン‥ ミシュランが返り咲き。うほほーいでは! ただその差はわずか、これ僅差と言っていい? ブリヂストンの2位続くのか‥