夏タイヤ 2024年シーズンのアップデートが完了!

タイヤの活用術! 市場動向を察知し現状理解を深める

 クルマのパーツの中で唯一路面と接するのがタイヤです。非常に大切なパーツながら、皆黒くて丸いゴムの塊だしその重要性は見逃されることが多い。

 そこで現状を取り巻く市場動向を詳細に察知、装着する時の選び方、そう考え方に繋げます。

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タイヤはなぜ黒くて丸い?(ブラックサークル)

 形あるものに対してデザインって大切だと思います。その点からタイヤはどうよ? 径や幅の大小は様々あるものの黒くて丸い(ブラックサークル)のは皆同じ、大きささえ合えば装着は基本可能というのが極論です。

 形が丸いのは転がる為に、そして黒いのはゴムにカーボンブラックと呼ばれる強度を高める黒い炭素の粒が配合されている為です。クルマの走りを支えるには非常に大きな力に堪えられなくてはいけません。その為の適正素材です。

 またゴム以外にも様々な素材で構成され、近年はシリカと呼ばれる二酸化ケイ素によって転がり抵抗低減を実現します。更には石油由来の素材を減らすなど環境面での気遣いも一般化しています。

 素材面での進化が著しくても黒くて丸いのは変わらず。やはり外見から性能の良し悪しを感じることは難しい? いやいやそうとも言えず! トレッド面(接地面)やサイドのデザインは製品により実は相当異なります。デザインの差は性能へ非常に大きな影響を及ぼします。見た目の差別化を得るためのものじゃなく本質は性能へ直結するものです。

 最も目立つのはトレッド面に刻まれた溝でしょう。主となる役割は排水性、そして静粛性。幅や本数、方向性などは勿論、細部に渡って特徴的なデザインが施され、より向上効果を狙います。

 これをそれぞれ車種特性に見合うよう最適化すれば、製品特徴別のカテゴリーに分散されます。黒くて丸いのは結果でありその中には多彩な性能を搭載しています。

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装着タイヤは新車装着と市販に大別

新車装着タイヤ

 クルマとタイヤ双方メーカーの共同開発が基本です。新たに開発する車種性能を最大限発揮させる為に、操縦安定性、乗り心地、静粛性、転がり抵抗等を満たした専用を主張します。

 ただ車種開発の一部に含まれることで、搭載技術や性能特性についてはグレーの部分が多い。その性格が製品特性の明確化に足枷となり、メーカーからは最小レベルの情報止まりです。

 また車種違いでも同一銘柄を採用するケースが多く、専用における程度に少なからず混乱がある。それでもメーカーにとっては採用実績が信頼の証となり主張には積極的です。

 但し、毎度同じ内容に終始する現状から情報の満足感を得られるかは微妙。少なくとも当サイトではつまらない、と判断し特別な興味が発せられた時を除きスルーしています。

市販タイヤ

 アフターマーケットでの汎用性を示しカテゴリーに対する性能追求を図ります。スポーツ性能を重視したタイプや快適性能を重視したタイプ、またミニバンやSUVなど専用タイプも構築し広く車種対応をフォローします。

 車種専用の開発ではないけれどカテゴリー内では各々特性を主張し、ユーザーの好みに合わせた選択が可能です。また購入手段は多岐に渡りコスト的にも新車装着より安価など、新車装着からの買い替えは圧倒的に市販となるのが現状です。

 興味深いのは購入メーカー。新車装着と同様を選ぶユーザーが一定数を占めるという。確か30%以上あったような・・ 従って新車装着に採用されることは、製品の信頼性にプラスして市販ボリュームにも繋がることになります。

構成比はこんな感じ

 JATAMA(一般社団法人自動車タイヤ協会)の公表値から、2021年タイヤ実績(乗用車用のみ)を抜粋すると、新車用が29,226千本。対して夏市販用31,839千本+冬市販用16,150千本、合計47,989千本でした。構成比は以下のように算出しました。(年度によって微妙な差がありますので参考レベルです)

新車用(29,226千本):夏市販用(31,839千本)=47.9:52.1
新車用(29,226千本):夏冬市販合計(47,989千本)=37.9:62.1

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タイヤ世界市場シェア

 世界的に見るとメーカーの勢力図に変革が起きています。メジャーと呼ばれるブリヂストン、ヨコハマ、住友ゴム(ダンロップ・ファルケン)、トーヨー、グッドイヤー、ミシュラン、ピレリ、コンチネンタルは当然ながら、これにアジアンメーカー等の台頭が際立ち激しいシェア争いが年々増しています。参考として2022年(2021年実績)の最新データを以下に示してみます。(出典:タイヤビジネス誌、2022世界シェアをメーカー別にランクしたもの)

1、ミシュラン 15.1%
2、ブリヂストン 14.2%
3、グッドイヤー 9.6%
4、コンチネンタル 6.7%
5、住友ゴム 3.8%

6、ピレリ 3.7%
7、ハンコック 3.4%
8、横浜ゴム 3.1%
9、中策ゴム 2.2%
10、正新 2.0% 

11、トーヨー 1.9%
12、サイルン 1.8%
13、その他 32.5%

 また世界3大メーカー、ビッグ3(ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー)の合計は圧倒的なシェアを誇っています。しかし、2000年に50%以上あったものが近年は30%台と減少に転じる傾向にあります。2022年は増加で推移‥

2022年 38.9%
2021年 35.7%
2020年 36.1%
2019年 37.8%
2018年 37.1%
2017年 37.0%
2016年 37.6%
2015年 38.0%

2010年 42.1%

2005年 53.2%

2000年 56.8%

 ということで、数値が示す通りメーカーの激しいシェア争いが勃発しています。逆に捉えれば、メージャーメーカーにアジアンメーカー等が加わり最大級の供給が実現しているとも言えます。

カーボンニュートラルに向けたタイヤ変革の動き

 ミシュランが2018年に投入したプレミアムコンフォート「e・PRIMACY(イー プライマシー)」、対象は電動車。電動車って何? EVカーのみではなく、これを含みモーターを駆動に採用したクルマのこと。EVは勿論、ハイブリッドやプラグインハイブリッド(PHEV)、燃料電池車(FCEV)など。

 投入はカーボンニュートラルに向けてを強調! カーボン? ニュートラル? 今度はこっちが分からん!

 なら整理しましょ。炭素(カーボン)の排出を完全ゼロに抑えることは現実的に難しい。その為に排出した分の同じ量を吸収または除去することで、差し引きゼロを目指すというもの。ニュートラルは中立を意味すると考えていいのかな。

 炭素(カーボン)とは温室効果ガス、つまりCO2、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスなど。

 この実現を目指す為に、クルマ業界で加速する電動化の流れが電動車という発想。そこから更に進み将来的にはEVまたは燃料電池車(FCEV)のみにするという。これに沿うタイヤの提案としてミシュラン「e・PRIMACY」がそのひとつ。

 ただEV専用へ向けた投入は既に実現しています。例えば、ブリヂストン「ECOPIA EV-01」がそれでした。ノイズを抑えEVで高い静粛性を実現、EV特有の偏摩耗を抑制しライフ性能に配慮など、EVの特性に対応性を示したもの。

 ここからが本題。電動車からEVや燃料電池車に市場は傾倒。その結果、タイヤも必然的に環境配慮型の最上級へ変革。製造、使用、廃棄まで環境性能を発揮。これが本筋となる。

 2010年に低燃費タイヤが導入開始になりその前後5年程かと。いや既にバブル崩壊後に始まっていた。それまでの豪華なバブルカーから一転し低燃費化が顕著に進み、当然ながらタイヤもその流れへ。

 当時は世界的風潮としてCO2排出量の削減が叫ばれ始めた頃。環境への取り組みにメーカー主張を強める必要があった。クルマ業界は大きな役割を持たせられ、一角に属すタイヤメーカーにも責務が課せられました。こんな事情がきっかけで出現したのがエコタイヤ、更に完了形が低燃費タイヤになります。

 ブリヂストンとヨコハマのカタログ、2007年シーズンを見てみた。いずれもエコの文字が多数、表紙からしてそう。製品展開トップに来るブランドは、ブリヂストンが「REGNO」、ヨコハマは「DNA」です。特にヨコハマはスポーツとSUV以外は「DNA」のブランドが必ず添えられる展開です。恐らくダンロップ、トーヨーなども同様だったかと。

 低燃費タイヤの普及は2014年に第2世代入り、60%を超え一定の成果を確認しました。これで呪縛からは開放され、スポーツが飛躍的な主張復活を遂げたのは2015年シーズンから。フラッグシップとなる展開が戻り、本質の追求がようやく復活した訳です。

 そしてスポーツにも低燃費タイヤの投入が実現します。必ずしも低燃費タイヤのみが高性能で素晴らしいとは言い切れないけれど、普及が進む今、タイヤ選択の基準となっていることは間違いない。一定要件を満たすには相応の技術搭載が必要、しかも相反する性能のレベルが高いほど実現は困難を極めます。その一つがスポーツタイヤです。

 スポーツタイヤは、ブロック面を広く確保し接地性を稼ぎ高いグリップ性能を得ています。その結果、加速や制動、コーナリングを高次元で実現します。抵抗の大きさ、と言っていいかな、低燃費とは間逆の方向です。スポーツカテゴリーにおける低燃費タイヤ化が果たされて来なかった理由としてここポイントになるのでは。

 2016年にヨコハマが投入した「ADVAN FLEVA V701」がようやくその殻を破りました。この意味は非常に大きい。位置付けは圧倒的グリップ性能を誇るピュアスポーツには届いていないものの、街中での快適性とスポーツ性能を底辺から支える懐の広い製品として、カテゴリー内での新たなポジションを強調します。

 流れは全体へ波及、低燃費に凝り固められた主張はカテゴリー本来の特性へ回帰、低燃費を含めたタイヤの本質、多様性を取り戻します。

 SUVタイヤも同様かと。M+Sなどの冬用性能を搭載するケース多いのが足枷でした。従って導入開始以来実現を果たしてこなかったんです。しかし、2014年にミシュラン「LATITUDE Sport3」が、SUVカテゴリーとしては初めて低燃費タイヤの規定を満たします。そして2015年にはトーヨー「PROXES CF2 SUV」が続きます。

 ある意味規定を満たすことで性能縮小化に割り切らなければならないのなら、意味は薄いと考えます。その結果が投入への消極性になっていたとも言えそう。

 ただカーボンニュートラル、というのはどうも懲り固まった発想の匂いがします。従って低燃費タイヤの出現期以上にスポーツカテゴリーにとっては逆風を感じます。取り囲みが厳しい?

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