グッドイヤー ICE NAVI 8 の特徴

製品情報

　グッドイヤーの「ICE NAVI 8(アイスナビ エイト)」は、単なるモデルチェンジではなく、長年積み重ねてきたシリーズの技術的到達点のひとつとして完成された製品です。

　日本市場に初めて「ICE NAVI」が導入されたのは1997年で、当時はアイス性能をとにかく高めることが課題でした。しかし、タイヤの進化は20年以上の時間を掛けて徐々に方向性を変え、氷だけではなく雪、さらにはドライ・ウェットでのバランスや、耐摩耗性、転がり抵抗の低減といった総合性能をどう融合させるかに焦点が移って行きます。

　2017年に投入された「ICE NAVI 7」は、その流れの中で左右非対称パターンを採用し、氷雪性能に加えてライフ性能や柔軟持続性を重視するプレミアムモデルとしての性格を強めた記念の存在でした。そして「ICE NAVI 8」は、この「ICE NAVI 7」を継承しつつ、さらにもう1段進化を遂げたという位置付けになります。

　「ICE NAVI 8」の進化の核はコンパウンドにあります。アイス性能の決め手はタイヤのゴムがどれだけ路面の微細な凹凸に密着出来るかという点であり、ここに極小サイズの分散シリカを導入することで路面追従性を飛躍的に高めています。

　更にシリカの効果を活かす為に、ゴムを長期間柔らかく保つ新しい軟化剤を配合しました。従来は使用を重ねると硬化が進みアイスグリップが落ちていくのが課題でしたが、この軟化剤がゴム内部の可塑性を維持し、冬の厳しい低温環境下でも新しい状態に近い柔らかさを維持します。つまり新品時の効きが長く持続することを狙っているのです。

　同時に「ICE NAVI 8」が強調するのが雪路性能です。近年のスタッドレス市場ではアイス性能が中心課題となり、各メーカーがしのぎを削った結果、その差は縮まりました。その反動で雪上性能は軽視されがちになり、アイス性能を優先すると雪路性能がやや後退するという傾向が一般的にありました。

　しかし「ICE NAVI 8」はここに挑み、両立を実現したと強調しています。その仕組みはトレッドブロックの構造設計にあります。ブロック両端の剛性をあえてコントロールし、接地時には閉じて雪を押し固め柱を作り、非接地時には開いてその柱を蹴り出すという2段階の変形を利用します。

　更に溝の交差点を増やし、ブロックの配置角度を緻密に調整することで、雪をしっかり掴んで蹴り出す雪柱せん断力を最大化しています。これによってアイスグリップと雪上での走破性をバランスさせ、冬道で求められる総合性能を高次元で成立させているのです。

　トレッドパターンの改良も大きなポイントです。「ICE NAVI 7」から導入されたアシメトリックパターンは「ICE NAVI 8」でさらに完成度を増し、特にOUT側ブロックの剛性を高めてコーナリング時の安定性を改善しました。

　その結果、アイスコーナリング性能は5％向上しています。さらにランド比を従来より2％増やして接地面積を広げ、ピッチ数を21％増加させて細かいエッジを増やしたことで、トータルエッジ数は7％増加。これがアイスブレーキ性能を8％改善する根拠となっています。

　また、ウルトラNAVIブレードと呼ばれるブロックの倒れ込みを抑える新技術によって接地形状が安定し、均等摩耗を実現して耐摩耗性は3％向上しました。加えて転がり抵抗も2％低減し、夏タイヤ「EAGLE LS EXE」と同等の転がり抵抗係数「A」を実現するなど、省燃費性能にも配慮されています。冬タイヤでありながら環境性能をしっかりと意識している点は、近年の市場動向を反映したものと言えます。

　市場全体で見れば、スタッドレス分野はブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップが強固なシェアを持ち、グッドイヤーはどうしても2番手グループに位置付けられて来ました。

　しかし「ICE NAVI 8」が示すのは、オールシーズンタイヤで注目を集めるグッドイヤーが、冬専用モデルでも確かな技術力を持ち、プレミアムゾーンで存在感を高めようとする姿勢です。

　製品改良をきっちり4年周期で行い、最新化を怠らないという点は、ユーザーにとって安心感があり、ブランドの信頼性を高める重要な取り組みでもあります。「ICE NAVI 8」は単に新しいモデルというより、グッドイヤーが冬タイヤ市場で存在感を強めるための象徴的な一手と見ることが出来ます。

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