ハイエンドSUVやCUVに向けられたウインタータイヤ
- カテゴリー：SUV/4×4専用
- サイズ：17～22インチ
- 扁平率：65～35％
- 発売：2012年
- インプレッション募集中
対象はメルセデスAMG、アウディ、BMW、ポルシェ、ランドローバー、ボルボなど。括りはSUVウインタータイヤ、夏タイヤ並みの高度で快適な走りを実現する。
製品情報
ピレリ「SCORPION WINTER(スコーピオン ウィンター)」は、その名の通りSUVやCUVを主戦場に据えた冬用タイヤでありながら、従来のスタッドレスという枠組みを超えた存在として位置付けられています。
特に高性能SUVを主なターゲットにしている点が特徴的で、単に雪道やアイス路での走破性を重視するのではなく、高速域や乾燥路、ウェット路でのパフォーマンスをも冬シーズンにおいて維持することを狙いとしています。
サイズ展開は17～22インチまでと非常に幅広く、一般的なSUVだけでなく、プレミアムブランドのハイパフォーマンスSUVにも対応するレンジを揃えています。
対象とされている車種群はメルセデスAMG、アウディ、BMW、ポルシェ、ランドローバー、ボルボなど、いずれも走りとラグジュアリー性を両立させたメーカーばかりであり、単なる冬季の安全性確保に留まらず、スポーティで快適な走行フィールを実現することが求められている背景が見えてきます。
ピレリが提示するアイス性能の10段階で8という数値は、やや解釈が難しい部分です。従来の日本市場におけるスタッドレスタイヤの基準から見ると、アイス性能が完全に特化されているとは言い切れず、どちらかと言えば冬季対応のハイパフォーマンスタイヤというニュアンスに近いと言えるでしょう。
その為にスタッドレスとオールシーズンの中間という見方は妥当で、アイスバーン主体の日本の市場とは少し方向性が異なる可能性があります。むしろ高速道路や積雪地帯の郊外で、冬期も夏タイヤ的なハンドリングや快適性を維持したいユーザーに向けられている印象です。
開発背景においては、2008年～2010年のWRC活動を通じて培った構造強度や耐パンク性能の技術が応用され、さらにF1で用いられるモデリング技術やシミュレーションを共有している点がユニークです。
つまり「SCORPION WINTER」は単なる季節タイヤではなく、モータースポーツ由来の技術を取り込んだハイエンド製品であり、製造工程自体も品質管理を最優先に据えています。
テストは3年以上の歳月をかけ、欧州やオセアニアの多様な環境下で30万kmに及ぶ走行試験が行われ、気温条件は-32℃～8℃超までと幅広く想定されています。これは冬の厳寒地だけでなく、晩秋や早春の比較的温暖なシーズンまでカバーする意図があり、ユーザーにとっては長いシーズンを1つのタイヤで乗り切れるメリットが大きいでしょう。
技術的には3つの柱が明確に打ち出されています。まずV字型のトレッドパターンによる高効率な排水・排雪性能、次に新世代ポリマーを用いたコンパウンドによる低温時の柔軟性とグリップ力の維持、そして最後に高剛性かつ正確なレスポンスを可能にする構造設計です。
これらは単に雪道を走れるタイヤという次元を超え、ドライでもウェットでもSUVに求められる快適性と俊敏なハンドリングを損なわないという設計思想を示しています。
「SCORPION WINTER」は、日本的なアイス性能特化型スタッドレスではなく、欧州を中心とした冬期ハイパフォーマンスSUV用タイヤというカテゴリーに属すると考えるのが正しいでしょう。
その為にアイス路面を日常的に走るユーザーにはやや不足を感じるかもしれませんが、雪の多い欧州都市やアルプス地方の高速道路を走るようなユーザーにとっては理想的な選択肢となり得る存在です。